能登半島地震 災害支援薬剤師(D-PhST長崎)活動報告
報告:みかん薬局 牟田 吉寛
期間:令和6年1月21日(日曜日)~令和6年1月25日(木曜日)
場所:珠洲市
1月21日 長崎県を出発
15:50石川県薬剤師会到着し、現状について情報収集〔石川県薬剤師会からの情報〕
・活動は珠洲市に決定。拠点は珠洲市民ふれあいの里健康増進センター
・避難所が何十と点在しているので回りきれていないと思われる。道はまだ安定してない
・医療は慢性期に移行してきている
・日本赤十字(以下日赤)救護所があり、広島県薬剤師会のモバイルファーマシー(以下MP)配置
・医薬品卸は1日1便頑張って必ず回ってくれている
・柴垣より上は水上下水道全滅。電気は通っている
・避難者は金沢の1.5次避難所でマッチング中
16:35広島県薬剤師会が珠洲市から石川県薬剤師会に帰着、広島県薬剤師会より報告を受ける〔広島県薬剤師会からの情報提供〕
・保健師からの依頼で帯同開始
・各診療チームが調剤済みの薬を持って行っていたが、人数に余裕が出てきたので不足で後日調剤になったもの等中心に少しずつ薬剤師が持っていくよう提案した
・薬剤師は調剤室に寝泊まりしており、車中泊出てきているので、使える施設があるのであれば使った方が良い
21:00金沢市柴垣本部の国立能登青少年交流の家に到着し薬剤師ミーティングに参加〔柴垣本部:薬剤師ミーティング〕
珠洲以外の地域は現地医療機関の為にも通常の保険診療の医療にシフトしていく段階(変にやる気のある人を抑制する必要がある)
1月22日
10:00 珠洲市市民ふれあいの里健康増進センター(以下拠点) 到着〔情報共有〕
・撤退に向けた方針になっているが、近隣診療所が開院しておらず、長期処方なども出ている状況。
・MPも拠点から薬持っていく。在庫は共通
・地域に保険薬局がない。現在営業していない、ではなく、元々無い。
11:40 石川県立少年自然の家
広島県薬のアドバイスもあり、利用可能か確認しに行く。積雪時の判断含めて。(上下水道不可、暖房なし)→まず試しに本日長崎県のみ利用決定
13:00 スズナリ日赤救護所 〔調剤・服薬指導業務〕
長崎県薬より1名派遣。使いたい薬、得意でない領域の薬剤について医師からの相談も多い。
17:00 スズナリ日赤救護所 終了
20:00 拠点〔薬剤師ミーティング〕
・厚労省の指示で日本チェーンドラッグストア協会がOTCを各避難所に置いていったが、避難所の看護師からどう扱えばよいかわからないとのことで介入依頼あり。
・長崎県薬剤師会2名、1/22は避難所に薬剤配達・服薬指導、CO2測定、OTC整理に行くことに
21:00 石川県立少年自然の家〔宿泊〕 石川県薬剤師会に継続した確保を打診
1月23日
9:00 緑ヶ丘中学校到着 〔薬配達・服薬指導、CO2測定〕
・CO2測定1900ppmであり基準の1500よりやや濃度高く、今より少しで良いので換気を気がけていただくよう具体的に方法説明。
・トイレの管理状況確認、毎日回収も来ており処理出来ている。凝固剤タイプ。男子トイレの未処理あったので排泄抑制かからないように伝達
・OTC管理について説明。厚労省設置分も整理。確認したい事、聞きたい事などあればご連絡いただくよう拠点連絡先お渡し
・保健師チームより体動困難者の受診もしくは往診について相談あり。医療は現地に返していく段階である為珠洲総合病院に先に相談いただき、難しい場合は健康増進センター対応になるであろう事を説明。健康増進センター薬剤師リーダーに経緯伝達。
11:30 若山小学校到着 〔薬剤配達・服薬指導、CO2測定、OTC整理〕
・CO2 3050ppm 一日3回掃除時に放送とともに10分間換気一方向していただける事に。暖房器具はそのままでok
・巡回保健師より喘息患者の薬剤切れかつ咳状況について相談あり、こちらで珠洲総合病院に伝えてすぐに受診していただく事に。
・OTCは整理、連絡先添付し、保健師・薬剤師いなければ必要時は相談していただくよう説明。
14:00 蛸小学校到着 広島県薬剤師会中島薬剤師に帯同 〔薬配達・服薬指導〕
・OTC確認 避難所の本部長管理されており出入庫、渡し先も記録されている。管理上問題無い。確認したい事、聞きたい事などあればご連絡いただくよう連絡先お渡し
14:30 スズナリ日赤救護所 〔撤収手伝い〕
家族の不足分処方希望女性を救護所に案内、日赤に取り次ぎ
15:00 降雪の為、スズナリ日赤救護所 一旦閉鎖
19:00 拠点
〔薬剤師ミーティング〕
1/24は日赤救護所休みの予定でもあり、調剤業務に余裕があるはずなので避難所周りをメインにCO2測定、OTC管理する予定。
1月24日
9:00拠点 〔全体ミーティング〕
・地域のクリニック お試しという事だが火曜から金曜まで午前診療開始 電話は不通
・医療ニーズない所には高齢者支援係 障害者支援係 を繋いでいく
〔DMATより〕
・コロナ受け入れはしない。
・撤退に向けて1/30までには清掃、現状復帰まで視野に。
〔自衛隊より〕 正院小学校に2部隊 医師いない
〔日赤より〕 すずなり救護所休診
〔JMATより〕 本日から珠洲に入る。避難所の段ボールベッドなどの生活アセスメント開始する
〔保健師チーム〕 在宅避難者のローリングを始めた
〔大谷小学校〕 感染は一旦落ち着いた
〔上戸小学校〕 ランドリーカー設置.避難者は自分達より未避難の周辺住民の利用を優先してあげていると。
10:15 上戸小学校 〔薬配達・服薬指導 2件、CO2測定、OTC管理〕
・服薬指導:薬手帳あり、お渡し分の情報を記載。また、娘が咳をしており、先日処方されたリンコデ錠なかなか効かないと。どうしても環境的に咳が出やすい事、咳止めの効果は限定的である事、熱・喉の痛み出てくるようなら遠慮せずに医療者に申し出る事、抗コリン作用について注意説明。
・OTCは保健師管理されており問題無い
・CO2 1020ppm換気はよくされている 部屋により1500ppmのところもあり 換気の方法・必要性について説明
10:55上戸保育園 〔薬配達・服薬指導 1件、CO2測定、OTC管理〕
・CO2 2080ppm 換気の必要性について、在室者・管理者に説明。今まで朝一回だったが、食事に合わせて換気実施して下さると。換気の仕方についても説明。管理者より「また訪問して欲しい」と
・備蓄のOTCについてアドバイス。厚労省設置無し。拠点連絡先もお渡し。
12:30 雪道の為、予定早めに柴垣目指し珠洲を離れる
14:20 宇水総合病院 〔情報共有〕
宮城県MP.兵庫県薬剤師と情報交換 保険医療に本格的に移行していっていると
16:00 国立能登青少年交流の家 到着
21:00 国立能登青少年交流の家 〔薬剤師ミーティング〕
石川県薬、柴垣本部、輪島(東京県薬)、門前(大阪県薬)、穴水(京都・兵庫県薬)、能登(福岡県薬)各地域より報告等あり、珠洲(長崎県薬)も報告
〔石川県薬より〕
・診療チームの一部が暴走、勝手に災害処方箋を出し単独で保険薬局に持ち込んだ事例あり。
・保険薬局において被害状況による負担金の判断にばらつきがある。誤って取った場合も返金あるので結論は同じだが、保険薬局自体が理解してないこともあるので対応注意。
・輪島で津波被災した薬局から、業務再開したいが現在の設備では同地にて再開出来ずどうしたら良いか相談あり。薬剤師法に基づいて回答。
・厚労省からOTCダンボール240箱 講堂にあり。
〔柴垣本部より〕
・女性が多くなり、特別棟追加で使用することになったが、お風呂が遠い事が難点。了解を。
〔珠洲 長崎県薬より〕
・薬局がない。臨時薬局作っているが、処方はほぼ通常処方。薬剤在庫の種類は増える一方。本部で考えていく必要がある。石川県薬自体が一度現状把握も含め行った方が良いのでは。
・1.5次避難が進み、避難所自体は減少傾向
・配置薬業者の介入提案があったが珠洲ではすでに厚労省のOTC放置問題があり、一旦断った。
・宿泊は毎日、石川県立少年自然の家を確保していただいている。
・自衛隊へ薬剤師からアプローチし道が不明もしくは怪しいところは帯同していただいた。
・不足分の配送などはワンストップで薬剤師がほぼ行うようになった。
・明日より珠洲に派遣となる岡山県薬に個別に申し送り
〔輪島 東京県薬より〕
・配達は2件のみ 災害処方箋基づく調剤、
・OTCを活用しようという動きがあり
・雪、市内は大丈夫
〔門前 大阪県薬より〕
・雪の為、支援中止
・モバイルにゾコーバ、ラゲブリオ 要望あり
〔穴水 京都・兵庫県薬より〕
・状況落ち着いている。保険薬局7再開
・本日災害処方箋なし
・近隣避難所ラウンド、環境は良い。
・MPに宮城県薬2名 福岡県薬が交代でMP入る予定
・道はほぼ問題なし
〔能登 福岡県薬より〕
・コロナ検査の立ち会い 全て陰性。それは医療機関に任せて欲しいとの意見があったが、依頼で行っており勝手にやっているわけでは無い事は意見として挙げた
・崖崩れあり
・現地保険薬局は一部負担金については全て取らないという事で統一した
〔七尾〕 避難所が新たに昨日1つ立ち上がっていた。地元の集会所を利用。
〔岡山県薬より〕
・本日到着。こだまで岐阜まで行き、北上してきた。
・明日から珠洲。
1月25日
10:40 石川県薬剤師会に到着 〔状況報告〕主に柴垣本部での報告内容
今後は珠洲に石川県薬剤師会も常駐した方が良い可能性を上申。
14:55 小松空港着 帰路につく
【報告者所感】
長崎県からの能登半島への派遣は1月17日から始まり、私は1月21日からの第2陣からの参加となりました。東日本大震災、熊本地震も合わせ通算3度目の被災地派遣となりましたが、それぞれ状況は異なり、慣れることはありませんでした。ただ、薬剤師としてやるべきことはあまり変わりなかったように思います。
現在、被災地に参集する薬剤師には共通言語等ある程度の災害についての知識が求められますが、それも含めて積極的な参加をしてほしいと思っています。被災地で何をしたらよいのか、わからないという人は「被災した薬剤師の仕事を肩代わりする」というだけでも十分です。これに関しては宮城県薬剤師会の丹野佳郎先生が言われていた「薬剤師は同じ薬剤師の仲間を助ける責務がある」という言葉がまさに被災地に赴く薬剤師の心を表してくれています。また、職場の理解は必須であるため、送り出す方も「想いを託す」という気持ちで送り出していただければ、その薬剤師はパフォーマンスを十分に発揮できるでしょう。
被災地は全ての職種が不安の中、お互いの専門性を垣根なく求めるため、個人的には「医療の原風景」であると感じています。変なプライドを持った医療者もほとんどおらず、常に職能をそれぞれ発揮し連携する中で、私は薬剤師の必要性を再認識しました。決して体験するために行くべきではありませんが、自分の医療感を見直させられる場所ではあります。私事ではありますが、初めて受け持った実習生と偶然にも珠洲市で出会い、薬剤師となった彼から「先生、僕、来ましたよ」と言われた時は、災害薬事についてのメッセージは届いていたのだと思えました。
現在薬剤師会ではDMATのようなチーム名がないため、長崎県のチームでは「D−Ph S T(ディーファスト:Disaster pharmaceutical Support Team)」との呼称を現場で提案し、同じ時期では災害支援薬剤師内で使われていました。今後は薬剤師会全体としてもこのような呼称があると専門性や一体感を出せて良いのではないかと思っています。
長崎県薬剤師会、長崎市薬剤師会でも今後、災害薬事コーディネーターや災害支援薬剤師の研修や整備を進めていく予定ですので、皆様もご理解、ご協力下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。